3章:労働環境

 

前に教化所の囚人だった李順玉さんは、教化所の将校が「教化所や管理所での製品は北朝鮮全体のGDP40%を占めている」といった話をするのをよく耳にしたといいます。どこまで正しいのかは定かではないが、この発言から強制労働の過酷さや、教化所や管理所(政治犯収容所)の目的のひとつが労働力の確保であることが想像できます。

 

あまりに過酷な労働は囚人を死に至らしめることもあります。たとえ病人や障害者であっても、一日のノルマを達成しない限り、十分な食料を得ることができません。李さんの話によると、价川(ケチョン)教化所の囚人は、換気が悪く薄暗い所の中で、十分な食事も与えられず、長時間の単純作業を強いられています。そのため、女性囚人の半数以上が頭や肩にしこりができたり、猫背になったり、時には手足の障害に苦しんだりしています。

 

時にこれらの労働は単に肉体的精神的に過酷なだけではなく、囚人の健康や命さえも脅かすものとなります。目撃者の言葉から、囚人が強いられた労働の一部を知ることができます。例えば、今にも崩れそうな炭鉱での労働、人糞汚物の運搬、人力による発電機の稼動、火事の消火作業など。

 

これらの過酷な労働により多くの囚人の命が奪われます。しかしながら、新しい囚人を補充することによって、生産ノルマを達成するための労働力を維持することができ、北朝鮮の高官たちは囚人の調達に事欠か着ません。

 

多くの看守が囚人の生産した国有財産を着服していることを元看守が打ち明けました。彼によると、看守は収容所の役職を得るために互いに競い合い、囚人に過剰な労働を強いることで自らの懐を肥やしています。こういった状況は全体主義体制下においてはよくあることです。


典型的な教化所労働者の状況


政治犯教化所の元女性収容者 李順玉氏の証言

 

 

教化所の表向きの目的は、囚人のイデオロギーを変えることにありますが、実際の目的は囚人による労働力の確保にあります。囚人は毎日1618時間、何の収入もなしに働いています。壁には牛革製の鞭が常に掛けられており、女性の囚人たちは理由もなく、毎日鞭で打たれ、蹴られ、殴られます。囚人は話すことも、笑うことも、休憩を取ることも許されていません。しかも、頭を下げたまま、ひたすら同じ動きを繰り返さなければならないのです。そのため、女性囚人の半数以上が頭や肩にしこりができたり、猫背になったり、時には手足の障害に苦しんだりしています。また、教化所の将校や看守は常にマスクを着用しています。なぜなら、囚人たちの悪臭に絶えられないからです。囚人はしばしば作業中に耐えられなくなり、その場で排尿や排便をしてしまうのです。

 

囚人は年に二回しかシャワーを浴びることができません。当然、すべての囚人がひどい臭いです。すべての教化所は汗の匂いで充満しており、教化所に入るやいなや、囚人の悪臭で肺を悪くしそうです。

 

教化所の将校、看守は一生同じ場所に配属されます。北朝鮮の高官は彼等を他の場所に異動させることによって自分たちの犯罪の詳細が外界へ漏れることを恐れているのです。

 



管理所(強制収容所)での過酷な労働

管理所の元看守 安明哲氏の証言

 

政治犯はしばしば非常に過酷な労働を強いられます。ほとんどの収容所には採石場があり、そこでは想像を絶する懲罰と作業中の囚人が急死するのを毎日のように目撃します。

 

多くの政治犯は「偉大な建設」、すなわち第三事務局によって管理されている、一般には知られていない核施設、トンネル、人体生物学研究所での業務に携わるために送られてきます。同時に、「偉大な建設」で懸命に働くことによって自由の身になることができるとの嘘の約束が交わされるのです。

 

しかし、その「偉大な建設」を無事にやりとげるものは誰もいません。生死を問わず家族のもとには決して帰れないのです。

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